リーガルミステリー。それは法律を題材にしたミステリー作品。
「特許やぶりの女王弁理士・大鳳未来」はそんな法律を扱った小説作品だ。
「特許やぶりの女王弁理士・大鳳未来」は法律の中でも特許権を題材にし、近代的なVtuberというテーマも織り込んでいる作品だ。
さらには登場人物も魅力的な高いクオリティを持つこの作品を感想を交えながら紹介する。
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特許やぶりの女王は第20回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作
特許やぶりの女王はミステリー作家の登竜門とも言われる『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作品。
つまり、面白さ、文章としてのクオリティが高い水準で保証されている作品。
新書判の発売から1年ほど経過しているため、安価な文庫版も発売されている。
新書版 特許やぶりの女王弁理士・大鳳未来
新書版はお高めだけど、しっかりした想定で高級感があるのが魅力。
文庫版 特許やぶりの女王弁理士・大鳳未来
文庫版も発売されている。こっちのほうが安価。
特許やぶりの女王の主人公は弁理士・大鳳未来
本のタイトルに書いてあるとおり、特許やぶりの女王の主人公は弁理士の大鳳未来だ。
弁理士とは
弁理士とは知的財産権のプロ。
知的財産権とは特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権……といった権利だ。
どれも発明やアイデア、見た目など人が考え出した財産を守るための権利だ。
(余談だが、僕は一時期資格取得の関係で知的財産権を散々勉強した。勉強しても難しいし、資格は取れなかった)
詳しく知りたい人は日本弁理士会のホームページが詳しいので読んでみて欲しい。(僕も読んだ)
日本弁理士会ホームページ
主人公の大鳳未来は弁理士で元パテント・トロール(特許ヤクザ)
主人公の大鳳未来は作中では弁理士として、特許の発明者を守るために奮闘する。
しかし、過去にはパテント・トロール(特許ヤクザ)として活動していたという。
※パテント・トロールは自分たちで特に使う予定もない特許を取得して、既存の製品やサービスに特許侵害として賠償金を請求する人たち(?)のことらしい。初めて知った言葉。
その一方で、作中での未来のセリフ「あなたの才能は私が必ず守ります」には、発明者を守りたいという弁理士としての信念が現れていると感じた。
元パテント・トロールだった未来が、どのような心境の変化を起こせばパテント・トロールとは真逆に見えるこのセリフが出るのか。
その主人公の過去もこの作品の魅力のひとつだ。
主人公の大鳳未来は自信家
主人公の大鳳未来はとても自信家だ。
作中では特許権侵害を警告されたある企業を守るために奮闘するが、もし特許侵害で訴えられてしまった場合は依頼の費用も、経費も、一切請求しないという。
明らかに金額のかかる手段で活動している未来がここまで言い切るからには、絶対に仕事を成功させると信じてやまない自信家な一面が現れていると思う。
(某ドラマの「私、失敗しないので」に通じる自信を感じた)
作者の南原 詠さんも弁理士
特許権というジャンルの法律を中心に展開される特許やぶりの女王だが、作者の南原 詠さんは企業で活躍されている弁理士とのこと。
つまり専門家による法律の知識によってこの物語は書かれている。
もしかしたらVtuber関連の特許を扱ったこともあるのかも?
特許やぶりの女王のあらすじ・Vtuberが特許権侵害を訴えられる
特許権を専門とする主人公の大鳳未来が、今回守るのはVtuber。
リーガルミステリーという数の少ないジャンル、その中でも珍しい特許権、さらには近代文化であるVtuberがどのような掛け合いを見せるのかもこの作品の大きな魅力の一つだ。
大人気Vtuber天ノ川トリィ
作中で大人気Vtuberとして活動しているのは天ノ川トリィだ。
トリィは歌唱力が高く、さらには演者の高いパフォーマンスと、それを再現する精度の高い技術を合わせもつVtuberだ。
そんなトリィは特許権侵害の警告を受け活動休止を余儀なくされてしまう。
なぜ、特許権侵害の警告を受けてしまうかはぜひ本を手に取って確かめてみて欲しい。
おそらく作者は特許権だけでなくITにも詳しい
特許やぶりの女王の作者、南原 詠さんは企業で弁理士として活躍されている法律の専門家だ。
しかし、Vtuber関連の技術を初め、ITにも精通しているようで、随所にIT用語や技術が散りばめられている。
もしかしたら、IT企業でITの特許を扱っている弁理士なのかもしれない。
そんな作者の豊富な知識に裏付けされた物語の展開は必見だ。
(2023/03/02追記)
作者について調べてみたところ、元エンジニア、現弁理士のようだ。ITエンジニアかはわからなかったが、技術面に関しても専門家として活動していた時期がありそう。
※ちなみに僕の本業はIT業界のエンジニアだが、全然知らない概念がたくさん出てきた。
ITエンジニアにも色々種類があるのである。僕が無知なわけじゃない。はず。
特許やぶりの女王は特許のことをよく知らなくても楽しめる
感想として、特許やぶりの女王は楽しく、気軽に楽しめるストーリーだったと感じた。
その理由として、法律だけでなくVtuberなど複数の題材を織り交ぜてストーリーが展開されることにあるのではないかと思う。
法律に馴染みのない人、興味があまりない人でもミステリー好きなら楽しく読むことができる。
(逆にミステリーは好きでなくても、法律が好きな人も楽しく読めると思うヨ!)
必要な特許権の用語は作中で解説されている
法律、特許権というワードで読みづらそうと思う人も多いかもしれない。
しかし、作中で特許権に関する用語についてもしっかりと解説されている。
魅力的な主人公があなたを物語に惹き込んでくれる
また、特許権がテーマではあるものの、Vtuberが中心に物語が展開するので親しみやすいのではないかと思う。
さらに主人公の大鳳未来が魅力にあふれる人物で、物語に惹き込んでくれる。
安心して物語に入り込んで楽しんで欲しい。
ドラマ化、映画化しても面白そう
特許やぶりの女王のメディアミックス展開は今のところ情報がない。
魅力あふれる主人公と骨太なストーリーはドラマ化や映画化と相性が良さそう。
あり得るのかわからないけど、ちょっと期待。
特許やぶりの女王は続編も発売している
今回紹介してきた「特許やぶりの女王」だが、既に続編も発売している。
正直、知的財産権を題材に物語を作るのは大変そうだと感じていたので、続編が出たことには驚いた。
主人公の過去など、「特許やぶりの女王」では描かれなかったエピソードが残っているので続編もぜひ読んで欲しい。
僕は買った。明日、Amazonから届く予定。
次は商標権侵害を扱った物語になるそうだ。
特許権って権利を誰が持っているかなど、わかりやすいところも多いんだけど、商標権ってもうちょっとふわっとしている権利のイメージがあるのでミステリーとしてどう成立させるのか、今から楽しみである。
続編 ストロベリー戦争 弁理士・大鳳未来 単行本
まだ発売されて日が浅いため、新書版のみ。
ただし、特許やぶりの女王を読んで楽しめた人なら買って損はない。